上演にあたって


 歴史を創る人びと   

今から二〇余年前、山陰の一村、山口県豊北町で原原子力発電所の建設に反対し、地域住民と全県の人びとがひとつになって全国ではじめて勝利したたたかいがありました。その中心を担ったのは、漁村の「母ちゃんたち」でした。人情豊かで美しい郷土を子どもや孫たちのために残し、平和な日本を築きたいと立ち上がった母ちゃんんたち、この無名の人びとのなかにこそ、社会のほんとうの主人公、歴史を動かすカがあることを鮮やかに浮き彫りにしました。この勝利の道はすぐさま日本列島を駆け巡って全国の人々を心の底から鼓舞激励しました。

母ちゃんたちか舞台の主人公

 創作劇『誇りの海』は、この母ちゃんたちが舞台の主人公として登場します。戦中戦後のどんな苦しみにも負けず社会の底辺で生産を担い、生活を支え、家族を守って純朴に生きてきた、やさしくたくましい姿は、日本のどこの町でもみられる平凡な母ちゃんたちです。その母ちゃんたちが、人間として、人の子の親としての真心からやむにやまれずたちあがり、逆流を乗り超え、行動する中で真実をつかみ、大きな世直しの奔流となって、あの胸のすくような決挙をなしとげていきました。舞台はこの現実の壮大なドラマを描いています。

だれか日本を救うのか

 戦後五七年目の年を迎え、新しい戦争への不安か現実のものとなっています。生活はますます苦しくなり、青少年をめぐっても心の痛む事件が連日おこっています。戦後、荒廃した郷土を復興するために、一生懸命汗水流して働いてこられた多くの人たちが、どうしてこんなに乱れた社会になってしまったのか、子どもたちの未来のために今こそ日本を救わなければと声をあげています。『誇りの海』の舞台が、歴史を創りたす人間のいのちと誇りのドラマとして、多くの人たちの心と響きあい、勇気と確信となることを願っています。

(チラシから転載)


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